<み>る会というアート団体に所属している話「art viewing… vol.5」のアーカイブ

<み>る会というアート団体に所属している話「art viewing… vol.5」のアーカイブ

僕がやっている他の活動については、これまであまり言及してきませんでした。「押入れの暮らし」は僕の個人的なプロジェクトであり、この空気感が他の活動と合わなかったりするかなと思っていたからです。

あと、全然関係ないことをいろいろとやっているので、ブログに書いてもあんまりねぇ、、と思っていたんですよね。基本ものの紹介をしているブログなので、ごちゃ混ぜにするのもなと。

でも、これからは自分の活動についてオープンにしていきたいと思いました。なぜなら、形は違えどすべて「僕の人生」だから。

僕が尊敬している人の1人、所ジョージの生き様を見て思いました。

たけみや
たけみや

あと、僕のもの忘れがひどく、記録しておかないと記憶できないので…

というわけで、今回は、僕が所属しているアート団体「<み>る会」についてと、先日開催された「art viewing… vol.5」のアーカイブをここに残しておこうと思います。

横浜市民ギャラリーで開催。「みること」とはなんだろう。また、私たちはどのようなプロセスを経て、ものごとをみているのだろうか。自分の脳内にある偏見のコレクションか…
www.tokyoartbeat.com

<み>る会とは

<み>る会は、「様々な媒体の作家が集まる場所」として2019年に発足されたアート集団です。媒体やテーマ、コンセプトを一切統一する気のない、いわば「バラバラ」な団体。

しかし、そういった特性があるからこそ、各作品について思いもよらない評価・批評が得られます。

芸術は百人いれば百通りの考え方を生み出します。しかし、同じ分野の巨匠、先輩、同輩から受けられるメッセージにはある程度偏りが生まれてしまうはず。そこを分散させることで、専門外の知識・観点を獲得でき、より自由にアート活動を広げていける。これが<み>る会だと思います。

実際、在籍していてすごく思うのは、同じ志を持つ仲間であり、かつ門外漢だからこそでしょう、雑談までもが今後のアイデアになることです。実際、今回展示した作品のファーストアイデアは、メンバーの藤巻瞬氏との雑談からでした。

たけみや
たけみや

踏切が開き、線路を横断するタイミングで何気なく放った一言が、作品になりました。

すっごく真面目に書きましたが、ちょっと盛りすぎました。実際は、休日にふらっと会うようなメンバーが在籍しているだけです。みんな他のことをやりながら、何かしらの作品を産み出しています。

メンバーは増えたり減ったりしますが、今年度はこの10名でやりました。

GEN
長田和馬
橋詰百華
樋口絢士
小森未鈴
武宮太雅
平野うらら
藤巻瞬
前田梨那
森田さら

art viewing… vol.5について

art viewing… は定期的に行っている企画で、今回5度目の開催となりました。6日間で約200人の方に来場いただき、今回は割と大盛況でした。

そもそもart viewing… って何?

art viewing… は、「アートを見るための展示」と訳せます。

先ほどもお伝えしたように、団体のテーマを統一していません。テーマを統一すれば、「美人名画展」とか「風の香りはスパイスに似ている」とか、何かしらつけられますが、そうじゃないので、展示のタイトルをつけるのが難しすぎます。そもそもつけると変な拘束力が発生するということで、こんなタイトルになっているのだと思います。(名付け親じゃないので、本当の由来はわかりません…)

名前の由来はいったん置いといて、、

このart viewing…の機会を活用し、互いに作品をみつつコメントを残していきます。そして、会場にいらっしゃる来場者の方も巻き込んで、作品について語りあうのが「art viewing…」です。

たけみや
たけみや

実際に、作家同士が思ったことをぶつけ合うイベントを会期中に開催したりもします。

art viewing… vol.5に展示された作品と概要と(僕のコメント)

記録として残すために、art viewing… vol.5にて展示された作品と概要を記載しておきます。(忘れちゃうので…)

あと、おせっかいかもしれませんが、少し僕のコメントも。

たけみや
たけみや

僕のブログだからいいでしょ!

作家名ごとに紹介していきます。

《carpe diem》ほか2点 – 平野うらら

主にフィルムカメラを使用して写真作品を製作している作家。

平野は、自分の位置(自分とは今どこにいるのか)を気にして撮影しているようだ。

展示風景 左から《carpe diem》《Home》《carpe diem Zine》
《carpe diem》

ラテン語で、その日を摘め。タイトルの意図は聞いていないが、気に入った画面をスナップ的に撮影しているのだろう。

《Home》

気に入った風景を混ぜて展示しているそう。家で撮った自分にとって身近な写真もあれば、海外旅行中につい気になってしまった写真も。ここ数年の「家」について考えることがこの作品のテーマらしい。

配置について作家に聞いたところ、家の壁を意識しているらしい。いつもの風景を展示会場で再現したかったそうだ。

《carpe diem Zine》

carpe diemシリーズの写真を用いてZine(小冊子)を製作したそう。外注せず手製本で製作するところに平野らしさを感じる。

《Diffuse》ほか1点 – 森田さら

写真・映像を主媒体として作品を展開。

光の差し方や奥行き感に魅力を感じているらしい。

本人は「私の日常を撮影したものなので、気張らずにご覧ください」と語っている。難しいことはわからないので、それに従ってコメントを残していく。

展示風景 両端《Diffuse》中央《b&w photography》

上は展示風景。写真だとどうしても暗くなるが、その場で鑑賞したときはキラキラとした印象だった。不思議な空気感に騙されていたが、おそらく、作家のいう「光の差し方や奥行き感」に魅了されていたのだろう。

写真では光や奥行き感がストレートに伝わるよう、モノクロにこだわったと語っていた。

《effect》ほか3点 – 橋詰百華

展示風景 手前の立体《effect》奥の壁、左から《layer》《gap2》右の壁2枚は連作《SIGNnotSIGN》

ものが重なること、そして互いに影響しあうことに魅力を感じ、製作しているそう。過去作は平面のものが多く、シルクスクリーン、リソグラフなどの版画技法を使って製作したものが多かった。

今回は、媒体として扱う幅を少し広げ、立体の作品に挑戦したようだ。

《effect》

アクリル板同士の重なりに着目し、立体作品を製作した。蛍光色のアクリル板は光に当たることで独特な輝きをみせていた。

作家本人はテグスで上から吊るしたかったようだが、会場的に厳しく、展示台の上に置くこととなった。最初は少し不服そうにしていたものの、最終的には、床面に反射した赤色を気に入った様子。

《layer》
《gap2》

版画技法で製作された過去作。版ずれを用いて、重なりによる影響を表現している。《layer》は3Dメガネが流行った2010年頃を思い出す。

ちなみに今回展示されていない《gap》はart viewing…vol.4で売れてしまったそう。

SIGNnotSIGN

野外アート展で展示していたものを会場に持ってきた。

《no.1 cut off living chunks》ほか2点 – 武宮太雅

左から《no.1 cut off living chunks》《no.2 a thin box that stores famous data》《no.3 aluminium hollow cylinder》
たけみや
たけみや

僕の作品ですね。

ものをレジンの中に閉じ込める作品。形状や色にのみ目を向けてもらいたく、レジンの中に閉じ込めて機能を排除した。

完全に機能のなくなった「もの」は現代、「ゴミ」として捨てられるが、この作品はそうじゃないらしい。「中に何が入っているんだろう」とじっくり中のものを観察してくれた。

《no.1 cut off living chunks》

直訳で「生きた動く塊を切ったもの」つまり、生肉を封入している。

「食べ物を粗末にしやがって」というのが、このシリーズを製作するきっかけになった。

《no.2 a thin box that stores famous data》

直訳で「有名なデータを保管する薄い箱」スーパーマリオのゲームボーイカセットが封入されている。ゲーム機に入れて遊ぶのも面白いが、レジンに入れて形状・質感を観察するのもおもしろい。

《no.3 aluminium hollow cylinder》

直訳で「アルミニウムの筒」アルミ缶が入っている。クラックが多く写真ではわかりづらい。僕が毎日飲んでいるビールの500mm缶をモチーフにした。

実は、上記で紹介した3つの作品の中に入っている「もの」は僕がそっくりそのままコピーした「にせもの」であった。この事実によって、鑑賞者は本当に完全に意味のない物体の形状を確認していることになる。

《破損》ほか1点 – 樋口絢士

展示風景 左から《未明》《破損》

僕の学生時代からの友人樋口が作った作品。今回の展示会期中は忙しく、顔を出すことは難しかった様子。これこそ「絵だけで」感じ取らなければならない作品だ。

《未明》

ティッシュペーパを使って画面を盛り上げた絵画。

「海のようにキラキラしている」と何人かの鑑賞者が語っていた。

樋口の作品は数多く見てきているが、どれも過激なタッチの中に繊細さ(優しさ)を感じる作品が多い。しかし、この作品だけはストレートに優しさを感じてほかならない。

右《破損》

こちらもティッシュペーパーを使った作品。学生時代(4年ほど前)に製作した作品だが今の樋口の作品と似通う部分があると思う。

個人的には、大学のギャラリーで見た4年前よりも弱いと思った。2度目の出会いだからということにして、彼の続編を期待したい。

《TWO TONE FLOWERSほか1点》 – 小森未鈴

デザインワークを主としている作家。

今回は版画技法を使った作風でart viewing…に参加した。

展示風景 左壁《TWO TONE FLOWERS》右壁《vegecano》

《TWO TONE FLOWERS》は、花をトレースしてオブジェクトに変換し、シルクスクリーンで印刷した作品。アートとして感じる形状よりも感覚的に「心地よい」と感じられることを重要視してオブジェクトを作成したと語った。

発砲系のシルクスクリーンインクを使用したようで、本物の押し花のように重なっている部分に凹凸が生まれていた。

《vegecano》

色が乗る部分と乗らない部分を作りシルクスクリーンで印刷した実験的な作品。手前に映る「ネギ」で野菜かもしれないと気づくが、それ以外の部分はイメージが崩れているため、モチーフが何かわからない。

写真を刷っているにもかかわらず、何かわからないところが面白いと思った。

《Monolith No.3》ほか3点 – GEN

GENは「火の痕跡」をテーマに作品を展開している作家。火が存在していた証明として残るコゲや酸化被膜の変化を探求している。

今回は、4つの立体作品を展示した。

展示風景 手前の三角柱《Monolith No.3》

2001年宇宙の旅に出てくるモノリスを元に製作したオマージュ作品。作家は、知恵を与える謎の物体と人類の進化に大きく関わった「火」を掛け合わせて製作したと語る。Monolithシリーズの1つで、本作は畳を使って製作している。

奥の三角柱《Monolith No.4》

Monolithシリーズで、鋼板を焼いた作品。畳のように焦げた痕跡は生まれないが、金属特有の酸化被膜が痕跡として残っている。

素材を再利用することにもこだわりがあるようで、知り合いの作家からもらった廃材を使用して制作をすることが多いと語っていた。

Metallica No.1

金属を使用して製作された1作目。ステンレス板の上で焚き火をするのだが、それぞれ異なる手法で行うことにより様々な表情を生むと語った。強く痕跡が残るものもあれば、あまり痕跡がないものもある。焚き方(しつけ方)によって自由奔放にも大人しくもなるのは動物と似ている。

《HAZE》左からシリーズよりNo .2,3,4,1

本来は絵画に使用するキャンバスを焼いた作品。今回展示されたものの中では最も火の痕跡を感じやすくなっている。本作も他の作家からもらったキャンバス(製作済みの作品を白く塗りつぶしている)を使っているため、よく見ると下の色が浮き出ている。

「色が見えるのはコントロールしているのか?」と質問したところ「特にそこはコントロールしていない。自然現象として考えている」と回答があった。

《swipe》ほか1点 – 藤巻瞬

展示風景 左3点《swipe》右の立体《moment》

時間と変化と広がる距離をテーマとして作品を展開している。

今回展示されていた作品は、素直に見れば写真と映像だが、本人曰く「どちらも媒体を写真としている」らしい。写真的に見た映像らしい。難しい。

《swipe》

スマートフォンの機能「ライブフォト」を使って撮った写真?映像?を1枚の写真に再編集した作品。自分と近い位置にある物体ほどブレが大きく、奥にあるほどブレが少ない。

藤巻と僕の見ている車窓は全く違うようだ。こういうふうに考察したこともない。が、なぜか共感できるため、すごく不思議なんだ。

1秒の動画をループさせた映像を、5画面表示している作品。写真は一瞬を切り取ったものだが、その範囲を少し拡大したのがこの作品だと語る。

一見すると、単管パイプで組まれた足場を彷彿とさせる無骨さがマッチしていてかっこいいと思うが、映像には無限ループする魚、少し動く鳥が写っていて、ミスマッチしていることに気づき面白い。

《mirror city》ほか5点 – 長田和馬

反射して映ったものを撮影する作家。鏡でできた立体を景色に取り入れる「mirror」シリーズは、景色に隠れもするし、存在感を主張したりもしている。

写真は「真を写す」と書くが、彼が行っているのはいわば「虚を写す」ことなのではないだろうか。しかし、イメージとして出てくるのは見慣れた都会や自然の風景。そのギャップに僕は面白さを感じている。

連作《mirror city》

窓ガラスと風景の像を1つにまとめた作品。都市の多様性や要素の多さを表現しているそうだ。

遠くから撮影したビルは一見すると、ただのビルだが、近づくと反射した虚像を写している。一方で、近接撮影したガラスは、ただの街並みを写しているように見えるが、近づくとガラスを撮影していることに気づく。

なんといえばいいのかわからないが、魅せられる写真であることに変わりはない。

《mirror》シリーズより左から#5,#6,#3,#4,#7

鏡でできた立体(以降モノリスと呼ぶ)を設置し、撮影した「mirror」シリーズ。

全く同じモノリスを使っていると作家は語るが、置く場所によって表情が変化するところに面白さを感じる。特に、左から2番目の《mirror#6》は風景に完全に取り込まれており、一見するとただの木造りの小屋でしかない。

《Hot Line#2》ほか1点 – 前田梨那

自と他の境目を気にして創作活動を行っている作家。《Stanp Man#2》では、人型の自作スタンプを1つ1つ手作業で押している。世界は生命の集合体であり、「私(自)」はある形態や言葉で構成された一部に過ぎないと前田は語る。

展示風景《Hot Line#2》

部屋全体に人型の像を投写する作品。ハロゲン球の熱で自動回転する仕組みが用いられており、常に、人型はゆっくりと回転している。

熱が篭ったり、人が高速移動したりすると、投写されている人型はスピードアップすることがある。

僕が鑑賞した時は少し早く歩いてしまったから、人型も同時にスピードを早めた。その瞬間、都会の喧騒や満員電車を感じ、苦しくなってしまった。しかし、電熱球から生み出される光の回転はとても心地よく、その場で僕は留まってしまうのだった。

手前から《Hot Line#2》《Stanp man#2》

《Stanp man#2》は薄いスポンジでできたスタンプを使い、1つ1つ手作業で紙に押し続けた作品。

全長は約3×4mある。前田がどれほどの時間をかけてスタンプを押したのかは、聞かないほうがいいと思う笑。

遠くから見ると絨毯のような質感をしていて、近づくと、細かい人型が見える。

同じスタンプで押されているはずなのに、薄いスポンジでできているから、不安定で全く同じ像を生み出さないと作家は語る。

僕は、最初「蛾の鱗粉」を見ているようで少し気味わるいと感じたが、作家の表現したかったことなのだろうか。あとで聞いてみたい。

まとめ

以上、10名の作品を紹介しました。

こうやって1つずつコメントすると、本当にいろんな作家がいることに気が付きます。今回の記事、結構頑張って書いたので、もし、ご覧の方で興味を持っていただけたなら、<み>る会のインスタをフォローしてもらえると助かります。

今後も<み>る会の活動についてこのブログで紹介するかもしれません。

たけみや
たけみや

余談ですが、作品のことを語ると、「だ・である体」になってしまうことに、気づきましたね…

写真撮影:前田 梨那 Rina Maeda